リスボンに憧れながら世界の片隅で砂を掴む

本、ポルトガル語学習、海外移住よもやま話。(※在住国はポルトガルではありません。)

海を越えて世界へ浸食する『麦わらの海賊団』

「海外に行く前に、日本の歴史や文化の知識を身につけるべきである!」

華人漢詩を披露したら尊敬された!」

 

意識がチョモランマ並みに高い国際派日本人が、時折噴き上げる説である。

 

が、結論から言うと、何を身につけるかなんて個々人が好きにすれば良いし、我ら中途半端人間には関係の無い話である。

そもそも、アカデミックな世界にしか接しない留学生や、高学歴の世界で活躍する人間でもない限り、自国の古典知識を他人に披露する機会は皆無に等しい。そんなものに興味ある人間など滅多に居ない。

私は在外歴十年程であるが、外国人から「日本文化についての即答できない質問」をぶつけられた事は、殆ど無い。そんな質問をしてくるのは「高学歴西洋人」か、「ガチの日本マニア」ぐらいである。(勿論、必死で検索して回答する。)

 

では、日本について現地人からどんな話を振られるかというと、

「観光情報」「アイドル」「漫画・アニメ」

クール・ジャパンの侵食を思い知る事となるのである。

若年層であれば、そう、あの「麦わらの海賊団」の固有名詞を避けることはできない。

(※今はもう次の世代へ話が移り変わっているかもしれないが、私の日本の少年漫画の知識はその辺りで止まっている。)

 

私のように「麦わらの海賊団」の漫画を実際に途中まで読んだ上で嫌悪しており、DQN臭溢れる麦わら哲学の信者に遭遇する度に戦慄する人間にとっては、好ましくない事態である。

ようやく奴らが蔓延る世界から逃れられたと思ったのに、さすがは海賊団。海を越え、日本国外にまでそのゴムゴムの触手を伸ばしていた。ゴムゴムなどとタイプしていて、背筋がゾワゾワしてくる。伏字にしたいぐらいだが、●●●●と全て黒塗りにしてしまうと何処かの組織の内部資料のようで意味不明になるので、ゴムゴムと書かざるを得ない。ああ、また書いてしまった!

 

せっかく新たな世界や文化への希望を抱いて外国まで出てきたというのに、何という事だろう。結局どこの国の人々も多くは、思考せずに快楽を得られる「バン、ボコッ、ワーオ!」(『華氏451度』より)の虜なのだろうか。(そういえば漫画の中にやたら「どん!」という効果音が書かれていたが、正に「バン、ボコッ、ワーオ!」そのものではないか。)

もうやめてくれ、ゴムゴムも忍者もアイドルも、うんざりなんだ……。

 

学歴も職歴も教養も全て中途半端、かつ、ちびまる子ちゃんの藤木のような性質の人間は、世界中のどこにいても、自分の居場所を見つけるのは難しく、孤独を感じるものである。

『海外』というキラキラワードに過剰に期待してはいけない。

だから、私のように藤木系・中途半端人間が何か間違えて外国に行くことになったとしても、冒頭の意識高い意見を鵜呑みにする必要はない。無理して古事記やら源氏物語やらを最初の1ページ目から読み始める必要もない。今の自分に必要だとか、読みたいと思ったら読めばいいのである。それよりも、現地語の習得や現地文化の調査に時間を使ったほうが良い。

 

ちなみに、実際に会ったことはないが、ハルキストはそこそこ存在するようである。

ハルキは偉大だ。好きではないが。