リスボンに憧れながら世界の片隅で砂を掴む

本、ポルトガル語学習、海外移住よもやま話。(※在住国はポルトガルではありません。)

文学

澁澤龍彦『高丘親王航海記』。エロス、そしてタナトス。

「航海記」の三文字を見て先ず思い浮かべる作品は何だろう。私の場合はスウィフトの『ガリバー旅行記』、もしくは河口慧海の『西蔵旅行記』である。 例によって『高丘親王航海記』は積ん読電子本の中に埋れており、いつどうして買ったのかも覚えていない。澁…

孤独を詠む、蛸を喰む。シェリーと井伏、月を愉しむ詩。

吹く風が秋めいてきた。そろそろ中秋である。 中秋と言えば月と団子。ウィキペディアで「中秋節」と検索すれば、宋の詩人・蘇軾が中秋の月を宝玉の皿に喩えた詩について書かれている(暮雲收盡溢清寒,銀漢無聲轉玉盤。此生此夜不長好,明月明年何處看。)。…

シーナ・ブラックホール『実存主義者』

わたしはどこに住んでいるの? 月曜日から日曜日のあいだに カラスの眼の網膜の中に わたしは青い風船の下でチクチクする薄膜 いつも、塩はこぼれる。食器棚の影が 床を横切る。 シーナ・ブラックホール『実存主義者』。翻訳は私が行った。 原文は下記Scotti…