いつまで経っても帰国出来ないストレス、そしてニーチェを読み続けた影響で心身のバランスを崩し、何も書けない日々が続いていた。ポルトガル語の勉強も一時停止中である。こんな時はあまり考え込むのは良くないと思い、Netflixに再加入し、暇さえあればドラ…
ある晴れた秋空の日、午前。空は青く高く、乾いた風が街路樹の葉を穏やかに揺すっていた。 薬局にて割れていた薬瓶を交換した帰り道。刺すような日光の下、目を細めてゆるゆると気持ち良く歩いていると、異様な光景が視界に入った。 犬の排泄物の臭いが漂う…
『必携 ポルトガル語文法総まとめ』(白水社)が日本から届いたので、毎日少しずつ読み進めている。久々に紙の書籍を購入したのでウキウキ気分である。 『必携 ポルトガル語文法総まとめ』は、欧州ポルトガルのポルトガル語と、ブラジルのポルトガル語両方に…
「航海記」の三文字を見て先ず思い浮かべる作品は何だろう。私の場合はスウィフトの『ガリバー旅行記』、もしくは河口慧海の『西蔵旅行記』である。 例によって『高丘親王航海記』は積ん読電子本の中に埋れており、いつどうして買ったのかも覚えていない。澁…
吹く風が秋めいてきた。そろそろ中秋である。 中秋と言えば月と団子。ウィキペディアで「中秋節」と検索すれば、宋の詩人・蘇軾が中秋の月を宝玉の皿に喩えた詩について書かれている(暮雲收盡溢清寒,銀漢無聲轉玉盤。此生此夜不長好,明月明年何處看。)。…
わたしはどこに住んでいるの? 月曜日から日曜日のあいだに カラスの眼の網膜の中に わたしは青い風船の下でチクチクする薄膜 いつも、塩はこぼれる。食器棚の影が 床を横切る。 シーナ・ブラックホール『実存主義者』。翻訳は私が行った。 原文は下記Scotti…
植木らが 打ち棄てられて 夢見るは 赤子の泣き声 青の秋空 (マキシミナ11世) 以前、集合住宅の公共のゴミ捨て場に使用済み便器が投棄されていた事を書いたが、昨晩は観葉植物が捨てられていた。 観葉植物が捨てられていたのは今回が初めてではない。これま…
自分とは対極の世界に生きる人が書いた本 黒木亮氏の『世界をこの目で』を、何とか読了した。 「何とか」という副詞がついたのは、文章が酷いとか面白くないとかそういう事が理由ではない、むしろかなり興味深い内容であった。では何が問題だったかと言うと…
「ジョージ・オーウェル」という名前を聞いて、人々は何を思い浮かべるだろうか? 1984?動物農場?スペイン内戦?どれもこれも暗い話ばかりのイギリス人作家? SNSの世界では何とかのひとつ覚えのように『1984』ばかり言及されるのだが、オーウェルが書き残…
あまりグチグチ書くのもジメジメ陰気でそのうちキノコが生えてきそうなブログだと思われそうなので控えたいのだが、10年ぐらいも住んで好きになれなかった国で(小綺麗な集合住宅の廊下に糞便が落ちている国である。好きになる人間がいたら、それはド変態で…
毎日詩文とポルトガル語を頭に詰め込み過ぎたせいか仕事のせいかわからないが、フロッピーディスクレベルの低スペック記憶媒体である私の脳が過労気味なので、ガッチリ構成した話はしばらく書けそうにない。故に、今日は語学学習のちょっとした体験談を書こ…
この記事を書いている途中で、久々にWikipediaでルイス・セプルベダ氏を検索したところ、「新型コロナウイルス感染により、4月16日死去」との記載があり、呆然としている。 志村けん死去以来の衝撃を受けている。何故、世界はこんなことになってしまったのだ…
有栖川有栖の国名シリーズ『インド倶楽部の謎』を読み終わった。 国名シリーズについて有栖川氏は「エラリー・クイーンに倣って題名に国名を冠したものを有栖川有栖版の国名シリーズと称してきた。」と、あとがきで記しているが、私はエラリー・クイーンを読…
前回のポルトガル音楽の記事ではファドとファドの歌い手を紹介したが、今回はバンド音楽を紹介したいと思う。 バンド音楽と言っても、ハードではない(Die!Die!Die!!!などと叫んだりはしない)、聴いているとワクワクしてくる音楽なので、安心してYouTubeで…
幸か不幸かWFH(Work From Homeつまり在宅勤務)時代が終わってしまい、記事を書く時間も読書する体力も減ってしまった。通勤は悪である。 だが、通勤の再開により、騒音地獄からは開放された。レオパレス並みの最底の防音レベルを誇る我が集合住宅では、近所…
今回の記事は、Twitter歴約10年の元ツイッター廃人である私が、Twitterをやめようかどうか迷っている人に捧げたい。 書き始めた途端にタイトルから離れるが、まずはペソアについて。 私がポルトガル語を勉強しようと志したきっかけ……それは、フェルナンド・…
有栖川有栖・火村英生シリーズの原点『46番目の密室』(新装版、講談社)を読了したのだが、この作品をまだ読んだことが無く、これから買おうとしている人に言いたい。 「電子版ではなく、紙の本を買うべし!」 何故かというと、「新装版のためのあとがき」…
イケメンな変わり者が大活躍!日本の探偵小説シリーズをはじめから hontoのブックツリーを眺めていたら、上記のようなタイトルと、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』のカバーが目に入った。 京極堂シリーズの中で美青年と言えば探偵・榎木津だが、どうも彼の事を指し…
それ、本当に中国語ですか? 「中国人観光客が騒がしい。中国語は本当に煩い言語だなあ、だから嫌いなんだ。」 インバウンドで沸いていた頃の日本からよく聞こえてきた台詞である。 だが、ちょっと待って欲しい。 その「中国語」とは、一体何を指しているの…
突然、世界中の港が次々と閉ざされ、「何処かへ旅する自由」が無くなってしまった。そんな時代、人間の心を慰めるのは、外国の美しい文学である。 ヘルマン・ヘッセが書き残したドイツの自然も素晴らしいが、スペイン・アンダルシアの詩人、フアン・ラモン・…
「何者にもなれなかった。」という考えに苦しめられている人に勧めたいのが、ヘルマン・ヘッセ『クヌルプ』である。 激務で心身がボロボロ、キャリアもコネクションも形成失敗。おまけに配偶者は反出生主義者となり、この人生で「親」になる事は無くなった。…
ポルトガルの民族歌謡と言えば「ファド」である……と言っても、ファドを聴いた事がある日本人はあまり居ないかもしれないし、ファドの存在すら知られていないかもしれない。知っている人は、ディープな民族音楽好きか、あるいはポルトガル旅行の際に聴いたか……
発売時インターネットで話題になった歌集なので、ご存知の方も多いだろう。 著者千種氏は1988年生まれの中東在住(歌集『千夜曳獏』に経歴の記載がある。)、新しい世代の歌人である。故に、近代の歌人のように、「結核で死ぬ間際の最後の命を振り絞って産み…
それは資本主義が見せる幻想 外国に住んだり、ネイティヴから教えてもらえば、外国語がペラペラになると勘違いしている人たちがいる。いや、勘違いしているのではなくて、自分が短期留学や語学教室の商売で儲ける為に、敢えてその考えを広めようとしているの…
ぼくは働く才能を持たないんだ。 『クヌルプ』(ヘルマン・ヘッセ、高橋健二、新潮社) 「海外で働きながら生活している。」などと書くと、とても意識高い人のように感じられるかもしれない。 「海外で働く」……この5文字だけで、タピオカのSNS映えなど一撃で…
あらすじ ある男が、自動車の運転席で信号待ちをしていた時、突然目の前が「真っ白に」なり失明してしまった……そこから本作のストーリーが展開する。白い失明は瞬く間に周囲へと広がってゆき、失明の感染を恐れた政府は患者たちを収容施設に放り込む。介助も…
「うちのフランス人はホニャララと言っていた。」 「同僚のマレーシア人はホニャララと言っていた。」 ネットを周回しているとこのような証言に出会う事がある。 ネットを周回しなくても、「フランス人は服を5枚しか持たない。」等の謎の本が量産されている…
日曜日にジョゼ・サラマーゴの『白い闇』を読み終えたので早速その感想を書きたかったのだが、月曜日という事でやる気が全く出ない。顔がずぶ濡れのアンパンマンの如し、である。それ故、お菓子を食べながら読み飛ばせる小話を書くことにする。 海外(途上国…
私の場合、下記の方法で語学学習のモチベーションを維持している。 対象となる言語で書かれた文学小説や詩を読む(翻訳で構わない) 対象となる言語が使用されているラジオや音楽を聴く 心身を健康に保つ 上記1、2をやってみても微塵も興味が出ない言語はど…
貫井徳郎氏(の本)との出会いは、ミステリ小説『慟哭』であった。読んだのはもう一年以上前なので内容はうろ覚えだが、あの鉛のような読後感はまだ記憶の中にある。恐らく、その読後感の勢いで買ったのであろう、『乱反射』が電子書籍積読リストの中に埋も…